DLCコーティングとは?種類や特徴、用途を詳しく解説

現在、乾式表面処理技術でご興味を持たれる方が多いのが、DLC(Diamond Like Carbon)膜に関することです。そこで、DLCについて簡単に紹介いたします。
DLCの概要と種類
DLCは、その名の通りダイヤモンド状のカーボン(炭素)のことです。炭素は、炭素原子同士の結合がsp3結合とsp2結合であるかによって性質が異なり、全てがsp2結合の場合は六角形の平面構造が層状に重なるグラファイト(黒鉛)、全てがsp3結合なら四面体構造のダイヤモンドになります(図1)。この炭素のsp2、sp3結合の成分比率を変えることで、炭素材料の性質は大きく変化します。このsp3/sp2比と炭化水素比を三元相図にしたものが、図2です。いわゆるDLCはこの図の中でおおまかに4つに分類されます。

(図1)

(図2)
この4分類については、下記にて詳しく解説します。
ta-C(tetrahedral amorphous- Carbon)とは
ta-C(tetrahedral amorphous- Carbon)は、sp3結合比率が高く水素を含まないダイヤモンドに近い性質で絶縁性です。硬度は90GPaにもなり、厚膜化すると膨張係数の差によって剥離するため1μm以下の成膜が一般的です。色は無色透明ですが薄膜は光学干渉により虹色に見えます。ta-C表面は高い親水性を持ち潤滑性に優れています。
a-C(amorphous- Carbon)とは
a-C(amorphous- Carbon)は、ta-Cよりsp2比率が高く、よりグラファイトに近く外観は光沢のある黒色で導電性を持ちます。ta-Cよりも柔軟なため厚く成膜が可能です。表面は高い親水性を持ち、潤滑性に優れています。ta-Cとa-Cには明確な違いは無く、sp3/sp2比の違いで性質が連続的に変化します。
a C:H(Hydrogenated amorphous- Carbon)とは
a C:H(Hydrogenated amorphous- Carbon)は、炭化水素成分を多く含み、外観は半透明の黒色でポリマーに近く、高い薬品耐性とガスバリア性を持ちます。
ta-C:H(Hydrogenated tetrahedral amorphous- Carbon)とは
ta-C:H(Hydrogenated tetrahedral amorphous- Carbon)は、炭化水素を僅かに含むがta-Cに近い性質で表面は疎水性を示します。ta-Cとta-C:Hも水素比率によって性質が連続的に変化します。
DLCコーティングの各特徴と用途
ta-Cの特徴と用途
ta-Cは、高硬度を生かして切削工具や金型部品などに使われます。また、優れた潤滑性を生かして歯車やピストン、コンロッドなどの摺動部品への適用も増えています。
a-Cの特徴と用途
a-Cは、ta-Cよりも厚く成膜できるため、耐食性や耐久性が必要な部材へ用いられます。ta-Cと同じく歯車やピストン、コンロッドなど摺動部品への適用も増えています。
aC:Hの特徴と用途
aC:Hは、柔軟で成膜が容易であるため、PETボトル内側へ酸化防止膜として利用されています。
ta-C:Hの特徴と用途
ta-C:Hは、高硬度を生かして切削工具や金型部品などに使われます。
DLCの成膜法とは
DLCの成膜法としては、CVD(化学気相蒸着法)とPVD(物理気相蒸着法)がありますが、ta-C、a-CはPVD、ta-C:H、a-C:HはCVDが一般的です。これはCVDの原料ガスが炭化水素化合物(メタン、アセチレンなど)のため、必然的に膜中に水素を含みやすいからです。
PVD法では成膜時のイオン化率が高くsp3成分を高めやすいイオンプレーティングが一般的ですが、膜中にドロップレットと呼ばれる微粒子を含みやすく膜の欠損原因となっています。このため、ドロップレット削減の様々な工夫が為されるようになっています。
DLC膜の適用に際してはこのようなDLCの性質、成膜法、などについて検討し、どのDLCが要求に一番適しているか、そのDLCを適切に成膜出来る成膜法は何であるか知る必要があります。
参考:ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)膜とその応用展開 三宅浩二
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvsj2/60/11/60_17-RV-030/_pdf

